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「エネルギー政策とビジネスモデル研究会」報告について

平成25年8月5日

東京大学公共政策大学院における国際石油開発帝石(株)の寄付講座「エネルギーセキュリティと環境」が、「エネルギー政策とビジネスモデル研究会」を開催し、このたび報告を発表したので公表します。

東京大学公共政策大学院は、国際石油開発帝石株式会社の寄付により設置された寄付講座「エネルギーセキュリティと環境」における「エネルギー政策とビジネスモデル研究会」の報告をこのたび取りまとめ、スマートコミュニティ事業が現実に直面している困難や課題に基づいて提言を発表しました。本寄附講座は、2010年4月に同大学院に設置され、本年(2013年)3月まで、スマートコミュニティ実証実験参加者、有識者等をメンバーとして先述の「エネルギー政策とビジネスモデル研究会」や国際シンポジウム(2012年11月)を開催してまいりました。

情報処理や情報通信技術(ICT)に関する技術、情報ネットワークインフラ、また、携帯端末等情報機器の急速な発達と普及が、家電等さまざまな製品の「スマート化」をもたらし、消費者・需要家がより能動的に動けるような環境が生まれてきています。また、これにより、エネルギーを消費者・需要家サイドで管理することが可能となり、さらにそれが飛躍的に簡単になることで、環境面及びコスト面で「意識の高い」消費者が生まれ、エネルギーをより効率的に利用しようという地域の試み、すなわち「スマートコミュニティ」の環境が整ってきています。

このような状況をふまえ、本研究会では、激しさを増す国際競争の中で、実証事業を中心とするスマートコミュニティに関するこれまでの実際の経験をベースとして、日本のエネルギー関係企業等が新しいビジネスモデルを構築し国際展開を行う上で、何に苦労してきたか、今後どのような組織や協力のための枠組みが望ましいのか、制度や人的資源の育成や確保等についてどのような問題や課題があるのかなどを洗い出し、成果を出すための方策等について議論・研究を行い、将来に向けた提言を行ったものです。

議論の過程で明確になったことの一つは、改めて、スマートコミュニティが新しいタイプのビジネスであり、需要は将来作られるものだということでした。もともとスマートコミュニティが非常に柔軟性のある概念であり、何を目指すのかといった基本的な事項の設定のしかたによりビジネスモデルが変わってきます。一方で、関係する個人、グループ、地域、地方、国それぞれのレベルで求められるものが異なるといった事情もありますし、さらに、ビジネスとしてのスマートコミュニティはエネルギー政策の方向性等にも影響を受けることになります。そのため、事業を実施するレベルでは、それぞれ異なる関係者のニーズや関心を調整し、必要に応じて、統合して事業を推進し、定量化して説得力のあるビジネスとして提示することが最も重要で、この点に現実的にも大きな困難があるとの共通認識が形成されました。

これは議論され提起されたことのほんの一例にすぎませんが、実証段階とはいえ、スマートコミュニティ事業が実際に直面している困難や課題に基づいて、報告の最後の章で提言をまとめています。ビジネス環境や意識の問題、リーダーシップや人材・スキルを巡る事柄、リスク管理やビジネスの推進体制等、幅広い分野を含んでいます。

【提言例】
-対事業者:プロジェクトリーダーやインテグレーターといった多分野にわたる事業者をまとめ、リスクを管理するためのスキルを明確化しこれを育成することが必要。
-対自治体:スマートコミュニティを活用して自治体の魅力を高めようといった意欲的な取り組みを期待。

この報告が今後のスマートコミュニティ事業の発展に少しでも寄与し、同時に大学等における将来の人材育成やビジネス・ガバナンス等に関する今後の研究・教育にとって参考になることを希望しています。

報告書全文については、以下のPDFファイルをご覧ください。

  • 「エネルギー政策とビジネスモデル研究会」報告 (PDF, 1.20MB)

[お問い合わせ先]
東京大学 公共政策大学院/政策ビジョン研究センター 特任教授
芳川 恒志 (よしかわ ひさし)
電話:03-5841-0520
メール:yoshikawa@pp.u-tokyo.ac.jp